2013年1月31日木曜日

序章Ⅱ <6>


馬車に揺られ、車窓を眺めるうち、
全てが夢だったのではないかと思う。

レイアには会わなかった。
全て、次の往診に行くまでの夢だったのだと。

忘れよう、と思っても忘れることなんかできないとわかっていたし、
忘れたくなどなかった。


──……忘れるんだ、エディ


レイアの必死な瞳が痛かった。
死に行く者の瞳だと思った。

──ここから去るんだ。私のことを忘れて。
そうすれば私は、お前のことばかり考えながら逝ける


レイアが覚悟しようとしているのがわかった。
一人で戦おうとしている。
その戦いに、自分が必要とされていないことも。


──頼む、エディ。行ってくれ


行かないでくれ、という響きは皆無だった。
でなければ、去ることなどできなかった。
覚悟が必要なのは自分だと知った。
エディは車窓の田園をじっと見つめ、耐えた。




つづく



(2006年2月22日発行 個人誌より転載)


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