馬車に揺られ、車窓を眺めるうち、
全てが夢だったのではないかと思う。
レイアには会わなかった。
全て、次の往診に行くまでの夢だったのだと。
忘れよう、と思っても忘れることなんかできないとわかっていたし、
忘れたくなどなかった。
──……忘れるんだ、エディ
レイアの必死な瞳が痛かった。
死に行く者の瞳だと思った。
──ここから去るんだ。私のことを忘れて。
そうすれば私は、お前のことばかり考えながら逝ける
レイアが覚悟しようとしているのがわかった。
一人で戦おうとしている。
その戦いに、自分が必要とされていないことも。
──頼む、エディ。行ってくれ
行かないでくれ、という響きは皆無だった。
でなければ、去ることなどできなかった。
覚悟が必要なのは自分だと知った。
エディは車窓の田園をじっと見つめ、耐えた。
つづく
(2006年2月22日発行 個人誌より転載)
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