窓から優しい風が吹き込んできて、カーテンを膨らませ、
そしてレイアの髪を乱した。
ソファに腰掛けたレイアの膝を枕に、エディが眠っている。
レイアは、その髪を、頬を、飽くこともなく撫でている。
静かな風が、そっと囁きかけてくれる。
レイアは、そっと微笑んだ。
エディの頬には、幾筋もの涙の痕がある。
不意に、エディのまつげが震えてその瞳が開かれた。
「……レイア?」
そこにレイアがいないことを恐れるように、エディが囁いた。
答えるようにその手を握ると、エディの体から力が抜けた。
「……怖い夢を見た? エディ」
「夢なら……良いと思う」
夢などではない。エディは、言外に言っていた。
「もう少し眠るといい。……こうしているから」
「レイア……」
「それとも、私の膝は居心地が悪いか?」
エディは、レイアの白く繊細な指を口元に寄せて、
そっと口に含んだ。
「あなたと一つになりたい」
言ってから、そっと首を振る。
「……忘れてくれ」
レイアは、エディの唇をなぞり、
しばらく触れていたが、結局離した。
そして、エディの頬に手をかけ、顔を上げさせる。
視線がぶつかると、エディの少し腫れぼったい瞳が見上げてきた。
「叶わぬことだと思っている?」
「私が、あなたと何をしたがっているのか、わかってるのか?」
「わからないほど子供じゃないさ」
エディは、少し驚いたような顔をしたが、やがてふと笑った。
「……私にそんなことはできないと思っているな、レイア」
「試してみればいい」
「その気はない」
吐息と共に呟いて、エディは再び目を閉じた。
「……その気はない?」
「レイア、あなたの体なら、見ていない所はない位に知っている。
今の状態もね。その上で、あなたに負担はかけられない。
一度あなたの肌を知ってしまえば、きっと私は夢中になる。
だから、あなたを抱くことは私にはできない」
「できないことを言うものじゃないな」
レイアの言葉に笑みが含まれていたので、エディは目を開け、
口元だけで笑った。
「……そうだな」
レイアの指が頬をなぞる。
エディはその手を掴み、袖をまくった。
レイアが怯えたように手を引こうとしたが、許さなかった。
「昨夜も切ったのか?」
「……ああ」
「……」
エディは、何も言わずにそっと傷跡に唇を寄せた。
「もう切る必要もないのだがな、エディ」
「……うん?」
「私は幸せだったよ。こんな体にならなければ、
お前とも出会えなかっただろう」
エディは、すこしだけゆっくり目瞬きをして、
レイアの言葉の意味を考えた。
「レイア、なぜ過去形で話すんだ?」
「過去の話をしているからさ」
レイアが、そっとエディの瞳を覆う。
「……お願いがあるんだ」
つづく
(2006年2月22日発行 個人誌より転載)
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