いつのまにか、こんなに小さくなってしまった空を、
それでもレイアは最上の幸せと共に見つめる。
冬の、青くどこまでも高い空に、刷毛で刷いたような白い雲が流れる。
風の中に、いまだ春の足音はなく、永い冬はまだ終わりを見せない。
この輝かしい朝の日光を、何よりも愛しいと思った。
あなたのぬくもりを知ったから、冷たい風に凍えることはない。
あなたと過ごす夜があるから、朝を疎むこともない。
あなたと生きた時間があるから、もう死を恐れることもない。
口元に笑みをたたえ、レイアはテラスに立つ。
翼を失った渡り鳥は、しかし決して不幸ではなかったのだ。
あなたの元に留まりたいと、自らその翼を毟って、通り過ぎ、
この季節と共に去るはずだった風を見送り、
それでも渡り鳥には耐え難い季節がやってくる。
しかし、たとえそれで息絶えても、あなたと離れる時間の方が、
どんなにか辛いだろうかと。
翼のように肩からはためかせていた薄いショールを、手放す。
風に巻上げられて離れていくショールは気にも留めず、
レイアは素足のままでテラスから花壇に上る。
冷たいレンガの感触がして、レイアは片足に体重をかけ、
空に向かって両手を伸ばした。
二度と帰れない空を泳ぐ、鳥たちを羨むことはもはやない。
「……エディ……」
あなたとの出会いのシーンは、もう思い出せない。
それほどに、あなたという存在は、あまりにも近く、遠く、あった。
「エディ……」
呟く声は、空高く舞い上がり、そこには何も残さず、消える。
虚ろな瞳から流れる涙は、風にさらわれて跡を残すこともない。
一度閉じて、開いた瞳には、力強い光があった。
まだ……終わることはできないから。
つづく
(2006年2月22日発行 個人誌より転載)
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